第1章 整備の基礎知識

 1.整備作業の目標

1)整備の目的
自動車整備業は、自動車の性能維持を図ることにより、保安の確保及び公害の防止に貢献している。
自動車は,使用につれて,徐々に各部の摩耗が進み,がたが増えるなどして,製造当初の性能が少しずつ低下していくものであり,ときには故障を起こすこともある。
これを整備技術によって復元し,その自動車の安全に対する信頼性を回復,維持させることが整備の目的であるが,特に,自動車は公道を走るという性格上,もし故障が起きた場合には,他に与える影響は極めて大きいため,整備作業に当たっては,単にその車両の機能を回復させるということでなく,自動車が使用中故障を起こさないような整備,すなわち予防整備という考え方を持つことが必要である。

2)整備技術の重要性
自動車は数千の部品から構成される精密な機械であり,日進月歩の技術革新により,新しい装置,新しい機構などが採用されている。したがって,自動車の整備に当たっては,これに対応した幅広い知識と,高度な整備技術が要求される。
 高度な整備技術とは,基本的な構造・機能をよく理解した上で,ものを考え,判断する能力が発揮できるー方,現物を分解,組み付けしたり.点検・調整や故障探究などの実際的な仕事を,迅速,確実に行えることである。それには,たゆまぬ勉学と経験を積み重ねることが必要である。
また,整備の仕事は,単に自動車を整備することばかりでなく,例えば,ユーザーに対し故障の原因を判り易く説明したり,新しい装置の取り扱い方を助言したりするなど,人を説得する力をつけることも,広い意味での整備技術として,大変重要なことである。

3)作業精度の向上
作業精度とは,作業の出来栄えのことであり,仕事の正確さのことである。作業精度の向上は,作業する人が目指さなければならない最も重要な目標であり,精度の高い作業をしていくための条件としては,次のような事柄があげられる。
 1.各部について,その最良の状態を知っていること。
 2.その部分に起こリ得る故障傾向を知っていること。
 3.作業が正しい手順で行われ,見落としや手落ちがないこと。
 4.整備に必要な基準や調整値をよく知っており、これに従って作業すること。
 5.作業途中及び作業後の適切な時期に正確さの確認がなされること。
 6.使用部品は信頼性の高いものを使用すること。

4)作業能率の向上
いろいろな職場で,生産性の向上という言葉がよく使われているが,自動車整備の場合,生産性を向上させるためには,作業能率を上げることが最も重要であり,能率の良い作業を行うための条件としては,次のような事柄があげられる。

@ 正しい手順で作業すること。
A その仕事に熟練していること。
B 作業環境が整っていること。
C 適切な機器,工具を使用すること。
D 作業者が働く意欲に燃えていること。
E 仕事に対する改善意欲に燃えていること。
F 作業時間の短縮に努力する意欲に燃えていること。

5)整備の種類
整備工場での作業は,大きく分けて,定期点検整備と一般整備のニつがある。
定期点検整備は,定期的に自動車を点検,整備することにより,故障を未然に防止するとともに,その時点での,車両性能を最高の状態に維持させることが目的である。これには,いわゆる車検整備が含まれている。
ー方,一般整備とは,クイック・サービスや各種の分解整備などを総称してこう呼んでいるが,その目的は主に故障した自動車を整備して,正常な元の状態にもどす作業である。

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上記の内容は、昭和61年1月の、<自動車整備技術 基礎自動車整備作業>の、一番初めの部分です。
この本は、自動車整備学校で 二級整備士を目指す人たちが、使ったテキストです。


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